口腔機能と健康との関係
日本人全体や特に若い世代では、食事が柔らかくなるなどの理由から「噛む力」が弱まっている傾向があります。子どもの場合、食べたり話したりする機能が十分に発達していないか、正常に機能していない状態を「口腔機能の発達不全」と呼びます。
年齢が上がるにつれ、虫歯や歯周病などの理由で歯の数が減ることがあります。また、口の中に問題があっても歯医者に行かないと、食べる力が低下し、野菜やお肉を避けるようになります。これが続くと、食べたり話したりする口の機能が弱まっていきます。このような状態を「口腔機能低下」と呼びます。
一見何でもないように思えますが、「食べる」「話す」「呼吸する」など、口周りの基本的な機能がきちんと発達していないか、正常になっていないまま歳をとると、オーラルフレイルの状態を超えて機能が不全になる可能性があります。これは健康な体の衰え(フレイル)を早める一因ともなります。生活の質を向上させ、健康な期間を延ばすためには、早い段階から口腔機能を健康な状態に保ち、それを続けることが大切です。
口腔機能の働きが不十分だと
「噛む力」の低下は、噛む筋肉や顎の骨が十分発達せず歯並びの乱れや顎関節症を起こすことがあります。それから、食物繊維の多く含まれる歯応えのある食品や、噛み応えのある肉などタンパク質の摂取量の低下することがあります。その結果、栄養不足や運動機能の低下にもつながります。
子どもの場合の代表的な例としては、歯列不正(出っ歯、受け口、ガタガタに生えている)、発音が上手くできない、口が乾燥している、口で息をしている、いびきをかくなどの症状があります。高齢者の場合は、食べられるものが減ることで低栄養となったり、免疫力の低下して病気にかかりやすくなる、誤嚥のリスクなどが高まります。
これらの状態については、本人は気づきにくいことが多いです。ご家族の方について下記のような気になる症状がある方や、口腔機能の発達や低下がご心配という方は、歯科医院へご相談ください。
子どもの口腔機能発達不全の症状
- 口をポカンと開けていることがある
- 鼻呼吸ではなく、口呼吸をしている
- 食事中によく食べこぼす
- クチャクチャと音をたてて食べている
- 滑舌が悪い
- 歯並びが悪い
- 就寝中にいびきをよくかく
高齢者の口腔機能低下の症状
- 硬いものを食べたがらない
- 食事の時にむせるようになった
- 食べこぼしをするようになった
- 薬を飲み込みにくくなっている様子
- 食事の時間が長くなった
- 滑舌が悪くなった
- 口の中が汚れている
口呼吸がもたらす影響は?
口腔機能の働きが不十分なことにより、口呼吸を続けることによって、口腔内にも様々な悪影響が及ぶことがあります。健康でキレイな歯を保つためにも、口腔機能を良い状態に保つことが重要です。
- 唾液の減少し、お口が乾燥する
- 口呼吸をすると唾液の分泌が減少し、口腔内が乾燥しやすくなります。唾液は口腔内を潤すだけでなく、食べ物の消化を助けたり、細菌を洗い流す役割も果たしています。
- 虫歯のリスク増加する
- 唾液には抗菌作用があり、口腔内の細菌を抑制する役割があります。唾液が減少することでこの抗菌作用が弱まり、虫歯になりやすくなります。
- 歯周病のリスク増加する
- 乾燥した口腔内は細菌が繁殖しやすくなり、歯周病のリスクが増加します。歯周病は歯肉や歯を支える骨に影響を与える病気で、進行すると歯を失うことにもつながります。
- 口臭が強くなる
- 口腔内の乾燥や細菌の繁殖は口臭の原因になります。特に唾液の分泌が減少することで、口腔内の清浄作用が低下し、口臭が強くなることがあります。
- プラークが付きやすくなる
- 唾液の減少によって口腔内の自浄作用が低下するため、歯の表面にプラーク(歯垢)が付きやすくなります。プラークは虫歯や歯周病の原因となる細菌の塊です。
口腔機能をチェックする
歯科医院では、専門の検査器具を用いて口腔機能の状態をチェックすることができます。定期的に検査することで、改善や予防を行うことができます。検査方法はとても簡単です。ご興味ある方、お気軽に当院スタッフへお声がけください。改善・予防のため治療やトレーニングもご提案させていただきます。
- 口唇閉鎖力の測定する「りっぷるくん」
- 「りっぷるくん」は患者さんの鼻下付近に光を照射することで口唇閉鎖力の測定することができる機器です。口唇閉鎖力不全症は、安静時に唇が開いている状態のことを言います。食生活に大きく影響する口唇閉鎖力不全を検査して、早期に改善することで、小児の健全な発育につながります。
- 舌圧測定器
- 舌圧測定器は、舌の運動機能を最大舌圧として測定します。舌圧プローブを口腔内に口腔内に挿入することで測定します。測定時間の目安は7秒です。定期的に舌圧を測定することで、口腔機能の低下状態を確認します。状態に応じてトレーニングを行うことで口腔機能の低下を予防することができます。
- グルコース分析装置
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咀嚼能力を簡単に測定できます。年齢、歯の本数、咬合状態(矯正中とか)の違いからか、スタッフ内でも咀嚼能力結果が大きく異なりました。
グルコース含有グミ「グルコラム」を20秒間咀嚼後、吐き出したろ液をセンサーチップに点着することにより、約6秒間で自動的にグルコース濃度が計測できます。